1. 概要

フィリップ・モリス・インターナショナル（PMI）は、世界のたばこ市場において主要なプレイヤーの一つです。同社は従来の紙巻たばこ市場でのリーダーシップを維持しつつ、加熱式たばこなどの新しい製品カテゴリーへの移行を積極的に推進しています。健康意識の高まりや規制強化により、たばこ業界全体が大きな変革期にある中、PMIの市場戦略は注目を集めています。

2. 市場規模

• 現在の市場規模： 世界のたばこ市場の小売売上高は、2023年時点で約1兆ドルと推定されています。

• 過去5年間の推移： 従来の紙巻たばこ市場は緩やかな縮小傾向にありますが、電子たばこや加熱式たばこなどの新カテゴリー製品市場は急速に拡大しています。特に加熱式たばこ市場は、PMIの「IQOS」を中心に年率20%以上で成長しており、2019年から2023年にかけて市場規模は2倍以上に拡大しました。一方で、紙巻たばこ市場は同期間に年率1-2%程度で縮小しています。

3. 市場成長率

• 現在の成長率： たばこ市場全体の成長率は、2023年時点で約1-2%と推定されています。ただし、この成長率は製品カテゴリーによって大きく異なります。

• 過去5年間の推移： 過去5年間、たばこ市場全体の成長率は緩やかに低下してきました。2019年には約3%だった成長率が、2023年には1-2%程度まで低下しています。この背景には、主に先進国市場での規制強化や健康意識の高まりがあります。一方で、新興国市場では人口増加や経済成長に伴い、需要が増加しています。また、新カテゴリー製品市場は高い成長率を維持しており、特に加熱式たばこ市場は年率20%以上の成長を続けています。このカテゴリーの急成長が、市場全体の成長率の下支えとなっています。

4. 主要競合他社

1. ブリティッシュ・アメリカン・タバコ（BAT）

   • 市場シェア：約32%
   • 強み：グローバルな販売網、多様な製品ポートフォリオ
   • 弱み：新カテゴリー製品での後発

2. 日本たばこ産業（JT）

   • 市場シェア：約15%
   • 強み：アジア市場での強いプレゼンス、安定した財務基盤
   • 弱み：新カテゴリー製品の開発で出遅れ

3. インペリアル・ブランズ

   • 市場シェア：約8%
   • 強み：低価格帯製品での強さ、効率的な経営
   • 弱み：高級ブランドの不足、新カテゴリー製品への投資不足

4. アルトリア・グループ（米国市場のみ）

   • 市場シェア：米国市場の約50%
   • 強み：米国市場でのドミナント・ポジション、高い収益性
   • 弱み：国際展開の制限、新カテゴリー製品での遅れ

5. チャイナ・ナショナル・タバコ（中国市場のみ）

   • 市場シェア：中国市場のほぼ100%
   • 強み：巨大な国内市場、政府の支援
   • 弱み：国際展開の制限、新カテゴリー製品での遅れ

5. 競合他社とPMIとの比較

PMIは、これらの競合他社と比較して以下のような特徴を持っています：

1. 市場シェア：PMIの世界市場シェアは約28%で、BATに次ぐ第2位の地位を占めています。

2. 新カテゴリー製品での先行：PMIは「IQOS」を中心とした加熱式たばこ市場で先行しており、この分野でのリーダーシップを確立しています。

3. 研究開発投資：PMIは売上高の約1%を研究開発に投資しており、この比率は業界トップクラスです。

4. ブランド力：「マールボロ」を始めとする強力なブランドポートフォリオを持っています。

5. グローバル展開：180カ国以上で事業を展開しており、地理的な分散が進んでいます。

6. 「煙のない社会」へのコミットメント：PMIは他社に先駆けて、従来の紙巻たばこからの脱却を明確に打ち出しています。

6. 今後の市場動向予測

• 市場規模の予測： 2025年までに、世界のたばこ市場は約1.1兆ドルに達すると予測されています。ただし、この成長の大部分は新カテゴリー製品によるものと予想されます。

• 成長率の予測： 全体の市場成長率は1-2%程度で推移すると予想されますが、新カテゴリー製品市場は引き続き10%以上の高成長が期待されています。

• 新たな市場参入者や技術革新の可能性： 電子たばこや加熱式たばこ市場の拡大に伴い、テクノロジー企業など異業種からの参入が予想されます。また、ニコチン摂取デバイスの更なる技術革新や、健康への影響を最小限に抑えた新製品の開発が進む可能性があります。

• 規制環境の変化の可能性： 世界的に、たばこ製品に対する規制はさらに厳格化すると予想されます。特に、新カテゴリー製品に対する規制枠組みの整備が進むと考えられます。また、環境への配慮から、使い捨て電子たばこなどに対する規制が強化される可能性があります。

7. 日本市場との関連性

• 日本市場での事業展開： PMIは日本市場で「IQOS」を展開し、大きな成功を収めています。日本は世界で最も加熱式たばこの普及率が高い市場となっており、PMIにとって重要な位置を占めています。

• 日本の類似企業との比較： 日本たばこ産業（JT）は、国内市場では圧倒的なシェアを持っていますが、加熱式たばこ市場ではPMIの「IQOS」に後れを取っています。JTの「Ploom」シリーズは、「IQOS」に追随する形で展開されていますが、現時点では市場シェアで大きな差があります。

  一方、国際市場においては、JTはPMIと激しく競合しています。JTは特にアジア市場で強みを持っており、この地域でPMIとの競争が激化しています。

  PMIは「煙のない社会」というビジョンを掲げ、新カテゴリー製品への移行を積極的に進めている点で、JTやその他の日本企業と異なるアプローチを取っています。この戦略の成否が、今後の両社の競争力に大きな影響を与えると考えられます。