ゼネラル・エレクトリック（GE）の過去3年間の財務データを基に、包括的な財務分析を行います。

1. 収益性の分析

売上高の推移

• 2020年：79,619百万ドル
• 2021年：74,196百万ドル
• 2022年：76,555百万ドル

GEの売上高は2020年から2021年にかけて約7%減少しましたが、2022年には約3%回復しています。この推移は主にCOVID-19パンデミックの影響とその後の回復を反映しています。

営業利益率の推移

• 2020年：△2.7%
• 2021年：6.0%
• 2022年：△0.5%

営業利益率は2021年に大幅に改善しましたが、2022年に再びマイナスに転じています。これは主に事業再編や一時的な費用の影響によるものです。

セグメント別の収益性（2022年）

1. GEエアロスペース

   • 売上高：26,050百万ドル
   • セグメント利益：4,775百万ドル
   • 利益率：18.3%

2. GEヘルスケア

   • 売上高：18,442百万ドル
   • セグメント利益：2,705百万ドル
   • 利益率：14.7%

3. GEパワー

   • 売上高：18,519百万ドル
   • セグメント利益：1,221百万ドル
   • 利益率：6.6%

4. GEリニューアブルエナジー

   • 売上高：13,544百万ドル
   • セグメント損失：△2,240百万ドル
   • 利益率：△16.5%

GEエアロスペースとGEヘルスケアが高い収益性を示している一方、GEリニューアブルエナジーは大きな損失を計上しています。

2. 成長性の分析

売上高成長率

• 2020年→2021年：△6.8%
• 2021年→2022年：3.2%

パンデミックの影響から徐々に回復傾向にあることがわかります。

セグメント別の成長率（2021年→2022年）

1. GEエアロスペース：21.2%成長
2. GEヘルスケア：4.0%成長
3. GEパワー：0.1%成長
4. GEリニューアブルエナジー：△9.9%成長

GEエアロスペースが顕著な回復を示している一方、GEリニューアブルエナジーは減収となっています。

市場シェアの変化

• 航空機エンジン市場：約50%のシェアを維持（CFM Internationalを含む）
• 医療機器市場：約14%のシェアを維持
• 発電設備市場：ガスタービン分野で約40%のシェアを維持

GEは主要な事業分野で高い市場シェアを維持しています。

3. 財務健全性の分析

負債比率の推移

• 2020年末：83.1%
• 2021年末：79.3%
• 2022年末：77.4%

負債比率は徐々に改善していますが、依然として高い水準にあります。

流動比率の推移

• 2020年末：2.94
• 2021年末：4.03
• 2022年末：3.21

流動性は良好な水準を維持しています。

フリーキャッシュフローの推移

• 2020年：△1,643百万ドル
• 2021年：1,889百万ドル
• 2022年：4,771百万ドル

フリーキャッシュフローは大幅に改善しており、財務の柔軟性が高まっています。

4. 効率性の分析

総資産回転率の推移

• 2020年：0.37回
• 2021年：0.38回
• 2022年：0.45回

資産の効率的な活用が徐々に改善しています。

棚卸資産回転率の推移

• 2020年：5.04回
• 2021年：4.46回
• 2022年：4.60回

棚卸資産の効率性はやや低下傾向にありますが、2022年に若干の改善が見られます。

5. 投資指標

1株当たり利益（EPS）の推移

• 2020年：△0.57ドル
• 2021年：2.08ドル
• 2022年：△6.06ドル

EPSは大きく変動しており、2022年は一時的な要因により大幅なマイナスとなっています。

株価収益率（PER）

• 2022年12月31日時点：N/A（損失計上のため）

配当利回り

• 2022年12月31日時点：0.42%

6. 総合評価

1. 収益性： GEの収益性は事業セグメントによってばらつきがあります。GEエアロスペースとGEヘルスケアが高い収益性を示す一方、GEリニューアブルエナジーは課題を抱えています。全体としての収益性改善が必要です。

2. 成長性： 航空事業の回復に伴い、全体的な成長が見られます。しかし、再生可能エネルギー事業の低迷が成長の足かせとなっています。

3. 財務健全性： 負債比率は依然として高いものの、徐々に改善しています。フリーキャッシュフローの大幅な改善は、財務の柔軟性向上につながっています。

4. 効率性： 資産の効率的な活用は徐々に改善していますが、さらなる向上の余地があります。

5. 将来の投資能力： フリーキャッシュフローの改善により、研究開発投資や戦略的な事業投資の余力が高まっています。しかし、高い負債水準は依然として制約となる可能性があります。

7. 今後の展望

1. 事業ポートフォリオの最適化： 収益性の高いGEエアロスペースとGEヘルスケアに注力し、GEパワーとGEリニューアブルエナジーの構造改革を進めることで、全体の収益性向上が期待されます。

2. 負債削減の継続： フリーキャッシュフローの改善を活かし、さらなる負債削減を進めることで、財務体質の強化が可能です。

3. デジタル化への投資： IoTやAIを活用したサービス事業の拡大により、安定的な収益源の確保が期待されます。

4. サステナビリティへの対応： 再生可能エネルギー事業の収益性改善と、環境負荷低減技術の開発に注力することで、長期的な成長機会を捉えることができます。

5. 市場環境の変化への対応： 地政学的リスクや原材料価格の変動など、外部環境の変化に柔軟に対応できる体制づくりが重要です。

GEは、財務体質の改善と収益性の向上に向けて着実に進展していますが、一部事業の低迷や高い負債水準など、依然として課題が残されています。今後は、事業ポートフォリオの最適化とデジタル化への積極的な投資により、持続的な成長と財務健全性の向上を目指すことが重要です。